フォークリフトは法令をや運転ルールを守らないと事故が発生し危険です。
この記事では、フォークリフトの事故事例と安全対策を紹介します。
フォークリフトの危険性を理解し職場の安全意識を高めましょう。
フォークリフト事故の発生件数・発生状況
フォークリフト事故は年間約2000件発生しています。
2020年の統計では1989件の事故が発生し、うち死亡事故は31件で2019年から大幅な上昇です。
最も多いフォークリフト事故ははさまれ・巻き込まれです。
フォークリフトの事故事例
転落事故
転落事故は作業中のフォークリフトが運転者ごと転落、荷台から作業者が転落する事故です。
- 運転者がフォークリフト搭乗したまま転落
- 荷台やフォーク部分に登った作業員が転落
1の転落事故は、ハンドルの切り過ぎなどによる操作ミスが原因で段差や高所から転落する事例です。
2の転落事故はフォークリフトの用途外使用にあたり、ルールを遵守しなかったことが原因となります。
はさまれ・巻き込まれ事故
はさまれ・巻き込まれ事故はフォークリフトの車体やマストに運転者がはさまれる、荷物や壁などに作業員が巻き込まれる事故です。
- フォークリフトの車体とマストやヘッドガードの間に運転者がはさまれる
- フォークリフトと壁や荷物の間に作業員がはさまれる、巻き込まれる
その他にも、マストと積み荷の間に運転者がはさまれる事故や、他の車両との間に作業員がはさまれる事故も報告されています。
運転ミスや安全確認不足、慣れや油断による漫然運転も事故原因です。
激突事故
激突事故はフォークリフトと作業員の激突で起こる事故です。
- フォークリフトの作業経路に立ち入った作業員が轢かれる
- フォークリフトから荷物が落下しないように支えていた作業員に荷物が落下する
フォークリフト運転者の注意不足だけでなく、車両の点検ミスや整備不良も原因となります。
転倒事故
転倒事故は、フォークリフトの転倒や横転により運転者が車両の下敷きになる、外に投げ出される事故です。
- 転倒したフォークリフト車両に運転者が下敷きになる
- 横転したフォークリフトから運転者が車外に放り出される
フォークリフトの転倒は、走行速度の出し過ぎや車体がバランスを崩しやすい操作が原因です。
- 荷物を高くリフトした状態で走行
- 下り坂や旋回時に速度を出し過ぎる
- 積み込み、積み下ろし時に固定が外れていない状態でトラックが動き始める
無積載のフォークリフトでも、旋回時に走行速度を落とさなければ転倒の危険が高くなります。
落下事故(荷崩れ)
落下事故は、フォークリフト作業中に荷物がパレットごと落下、パレットに積載された荷物が落下する事故です。
- フォークリフトに積載中の荷物が作業員に落下し負傷
- トラックからのフォークリフト積み下ろし作業中に、荷台から荷物が落下し破損
落下事故は操作ミスや安全確認不足、危険な荷の積み方が原因となります。
フォークリフトの事故原因
運転操作ミス
運転操作ミスはあらゆる事故の原因になります。
運転者だけでなく周囲の作業者にも危険が及ぶので、操作の早さよりも正確さが重要です。
事故原因となる操作ミスは以下の3つが多くなります。
- ハンドル操作ミス
- レバー操作ミス
- 速度の出し過ぎ
運転操作ミスは、フォークリフト初心者が引き起こしやすい傾向です。
しかし速度の出し過ぎは、操作ミスではなく慣れによる慢心が原因のケースもあります。
初心者だけでなく経験者にも、定期的な教育が必要です。
安全確認や法令遵守を怠る
周囲の安全確認を怠ると、設備や商品の破損事故や人身事故の原因となります。
安全確認は、指差呼称やシートベルトの装着など日常的な実施が必要です。
安全確認を実施しない職場では、フォークリフトの無資格運転など法令遵守も怠るケースも見受けられます。
事故を引き起こせば社会的責任を問われるので、安全確認と法令遵守は徹底してください。
フォークリフトの点検や整備不足
フォークリフトの点検整備の不備は事故の原因です。
整備不足でハンドル操作やブレーキ操作が上手くいかず、転倒事故や激突事故を引き起こします。
走行装置や荷役装置に異常があれば事故のリスクは高いです。
正確な運転操作や安全確認を徹底しても、整備不良による事故は防げません。
フォークリフト作業開始前に点検と整備を済ませましょう。
パレットや荷の危険な積み方
パレットや荷物の危険な積み方は事故の原因です。
作業の速さだけを追求して荷物の積み方やパレットの重ね方が雑になると、荷崩れの原因になります。
- 荷物がパレットからはみ出ている
- パレットを不安定に積み重ねる
- 偏荷重
パレットから荷物がはみ出ていれば、接触し破損するリスクが高まります。
また、パレットを高く積み重ねたり、斜めに積み重ねたりすると、不安定になり危険です。
落下事故や、作業者が近くにいればはさまれ事故を引き起こします。
偏荷重
フォークリフトの偏荷重は、フォークリフト転倒事故の原因となります。
偏荷重とは左右のどちらか又は前後のどちからに偏って荷物を積んだ状態です。
フォークリフトの偏荷重は荷物の固定が不十分の場合も発生します。
荷物の重量が基準値以内でも、偏荷重では荷崩れやフォークリフトの転倒や横転が起こりやすいです。
偏荷重でフォークリフトの重心が左右どちらかに偏れば、横転しやすくなります。
重心が前後に偏れば、転倒の危険が高くなります
フォークリフトの作業範囲が不明瞭
フォークリフト運転者が安全確認を徹底しても、作業範囲内に他の作業員が立ち入れば事故の原因になります。
なぜなら、運転者が作業員の存在に気づかないことがあるからです。
フォークリフト作業範囲に人が立ち入れば、激突事故やはさまれ事故を引き起こします。
フォークリフト運転者だけでなく、職場全体で事故を防ぐ意識が必要です。
慣れによる慢心
慣れによる慢心も事故の原因です。
フォークリフト作業に慣れてくると、基本操作を忘れがちになります。
走行速度の出し過ぎや、爪を上げたまま走行する、走行装置と荷役装置の同時操作など危険な運転が常態化します。
危険運転はさまざまな事故を引き起こします。
フォークリフトの事故対策
フォークリフト4原則の徹底
フォークリフト4原則とは、多くの職場が取り入れている4つのルールです。
- 走行速度は10km/h以下
- バック走行が基本
- 止まれの表示を必ず守る
- 死角の安全確認を怠らない
フォークリフト4原則をもとに、下記のような社内ルールを作成し従業員へ教育しましょう。
従業員が社内ルールを徹底することで、安全な作業環境が保たれ事故の抑制につながります。
- 運転席から離れるときはエンジン停止
- 運転中の携帯電話使用禁止
- 進行方向・交差点での指差し呼称
- 誘導員の指示を守る
- 作業半径は立ち入り禁止
- 運転席での飲食禁止
フォークリフト停止5原則
フォークリフト停止5原則は、フォークリフトを駐車するときの基本ルールです。
フォークリフト4原則と合わせて社内ルールに取り込みましょう。
- サイドブレーキを引く
- フォークを床面まで下ろす
- エンジンを止める
- キーを抜く
- 歯止めをする
速度制限
速度制限はフォークリフト4原則では10km/h以下です。
構内では路面、通路の見通しなどに応じて細かく速度制限を設けましょう。
段差や坂道走行では、徐行の速度制限も必要です。
死角
倉庫や工場内は、死角となる場所が多いです。
死角から人が飛び出してくる危険があるため、フォークリフト運転者には一時停止を、歩行者には別の安全なルートを確保しましょう。
また、整理整頓や作業場のレイアウト変更で死角を減らす方法も有効な対策です。
指差し呼称の徹底
指差し呼称で安全確認を行いましょう。
交差点や発進時など声に出して毎回確認することで、周囲の安全確認と他の作業者への注意喚起にもなります。
指差し呼称を習慣化し、危険や異常を事前に発見しましょう。
点検と整備の徹底
フォークリフト法定点検は事業者の義務です。
始業開始前点検はもちろん、月次点検、年次点検も必ず実施し、異常個所を整備してから乗車しましょう。
荷崩れ防止対策
パレットに荷物を積む際は、偏荷重にならないように均等に荷物を載せてください。
また、パレットを重ねる場合は、高くなりすぎると危険です。
高さ制限のルールを決め作業者に徹底させましょう。
荷物をひもやラップ固定する方法も有効な荷崩れ防止対策になります。
フォークリフトと人の通路を分ける
フォークリフト作業中に歩行者が侵入しないように、作業範囲と歩道を明確に分けましょう。
作業範囲と歩道の床面を色分ける、作業範囲と歩道をパイロンで区切るなどの対策があります。
また、時間帯で歩行者やフォークリフトの立ち入り制限する対策も有効です。
危険予知トレーニング(KYT)
従業員へ定期的に危険予知トレーニングを実施しましょう。
危険を発見する能力が高まることで、事故を未然に防ぐことになります。
職場全体のリスクアセスメントも兼ねて災害防止に努めてください。
>>>フォークリフト危険予知トレーニング(KYT)進め方と事例集
ドライブレコーダーを利用する
ドライブレコーダーの映像は事故防止対策や、安全教育にも役立ちます。
万が一事故起こした際にも、映像を解析することで事故原因を分析しやすくなります。
フォークリフト用途外使用をしない
フォークリフトの用途外使用は重大にな事故につながる危険が高いです。
法令を遵守し安全職場環境を整えましょう。
>>>フォークリフト法令で定められた禁止作業と安全な作業計画
フォークリフト爪の事故対策
フォークリフトは爪の操作が事故につながるケースも少なくありません。
下記のような対策を講じ危険を回避しましょう。
- 爪に滑り止めを付ける
- 水平のセンサーを設置する
- 爪の差し込む長さがわかるように印をつける
看板や標識で注意喚起
危険個所やには標識や看板を設置し、ルール遵守の徹底と注意喚起をしましょう。
口頭で伝えるだけではルールは浸透しづらいです。
明確に表示することで認知も高まり、安全への意識も向上します。
後退時の危険性
フォークリフト後退時は運転者には死角が増えます。
後退を知らせるブザー音や、センサーライトで周囲に接近を知らせる対策が有効です。
雨対策
雨が降るとフォークリフトは転倒、スリップの危険が高まります。
事故を防ぐためには、路面に滑り止めの加工をする対策が効果的です。
また、視界も悪くなるので必要に応じて誘導者を配置しましょう。
シートベルトの装着
フォークリフトのシートベルト着用に義務はありません。
しかし、フォークリフト転倒時に車両にはさまれる事故が多発しているため、シートベルトの着用は推奨しています。
誘導者の設置
誘導者を設置する際はフォークリフト運転者への合図の方法を決めておきましょう。
危険を減らすため、誘導は決められた1人が行います。
誘導者の注意点は以下のとおりです。
- 誘導者は運転者から見やすく安全な位置にスタンバイ
- 運転者への指示や合図は大きな動作と発声で行う
- 誘導中は周囲の状況にも注意を払う
- 危険な場合はすぐに停止させる
- 他の作業者を近寄らせない
- 誘導修了時は運転者にその旨を伝える
フォークリフト事故報告書
フォークリフト事故が発生した場合、事故報告書を作成し事故事例を社内や関連会社で展開しましょう。
事故事例を共有し従業員へ周知することで、事故の抑止力につながります。
事故報告書には次の項目を作ります。
- 作成日時
- 当事者の基本情報
- 作業内容
- 事故内容
- 発生原因
- 再発防止対策
まとめ
フォークリフト事故は毎年約2000件発生しています。
事故が多発すれば、従業員や企業に被害をもたらします。
対策を徹底することで、フォークリフト事故を減らすことは可能です。
法令遵守、社内ルールの整備、安全教育を行い事故を未然に防ぎましょう。
コメント