フォークリフトは定期的な点検が必要です。
点検を怠ると、フォークリフトの性能低下や故障だけでなく重大な事故につながる危険もあります。
さらにフォークリフトには3つの法定点検があり、怠ると罰則の対象です。
法定点検の種類と内容の理解を深め、フォークリフトを安全に運用してください。
フォークリフト法定点検の種類と義務
フォークリフト法定点検の実施は労働安全衛生法により義務付けられています。
事業者は点検を実施し車両を管理する義務があります。
フォークリフトの法定点検は自主検査とも呼ばれ、自動車で例えると車検にあたります。
フォークリフト法定点検の種類は以下の3つです。点検の種類により実施頻度が異なります。
- 特定自主検査(年次点検)1回/年
- 特定自主検査(月次検査)1回/月
- 始業点検(作業開始前点検)作業開始前毎回/日
フォークリフトの点検対象
フォークリフトの点検対象は、運転資格が必要な最大積載荷重1t以上のフォークリフト(運転技能講習修了)、最大積載荷重1t未満のフォークリフト(特別教育修了)です。
作業で使用する全車種が点検対象になります。
始業点検(作業開始前点検)方法
(点検)
第百五十一条の二十五 事業者は、フオークリフトを用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、次の事項について点検を行わなければならない。
一 制動装置及び操縦装置の機能
二 荷役装置及び油圧装置の機能
三 車輪の異常の有無
四 前照燈、後照燈、方向指示器及び警報装置の機能
労働安全衛生規則151条25に定められたとおり、始業点検の項目は以下の4つになります。
- 制動装置および操縦装置の機能
- 荷役装置および油圧装置の機能
- 車輪の異常の有無
- 前照燈、後照燈、方向指示器および警報装置の機能
始業点検(作業開始前点検)の実施者に特別な資格は必要ありません。
誰でも点検可能になりますが、フォークリフト作業者の点検実施が望ましいです。
作業者はフォークリフトの車両に関する知識もあり、毎日乗車していれば小さな変化や異常にも気づきやすいからです。
始業点検(作業開始前点検)は毎日の安全作業のために必ず実施してください。
始業点検手順
始業点検(作業開始前点検)は、チェックリストを作成し項目ごとに実施する方法がおすすめです。
必須項目以外にも、任意のチェック項目を作成し実施しましょう。
また、フォークリフトの車種(エンジン式・バッテリー式)や用途により点検項目が異なります。
使用しているフォークリフトの種類に応じて、チェックリストの項目を決めてください。
以下の手順で点検を実施すると効率が良く、点検漏れ防止にもなります。
- 外観
- エンジンルーム
- 車上
- 充電器
外観の点検項目
- 水漏れや油漏れはないか
- マストやチェーンに異常はないか
- バックミラーに異常はないか
- タイヤ溝はあるか
- タイヤに損傷はないか
- ホイールナットは締まっているか
- 爪やアタッチメントに異常はないか
- バックレストヘッドレストに異常はないか
エンジンルームの点検項目
- エンジンオイルは適量か、汚れはないか(エンジン式)
- エンジン冷却水は適量か、汚れはないか(エンジン式)
- バッテリー液は適量か、漏れや腐食はないか(バッテリー式)
- ブレーキオイルは適量か、汚れはないか
- 作動油は適量か、汚れはないか
車上点検
- エンジン始動は良好か、排気の色に問題はないか(エンジン式)
- 始動後に異音はないか(バッテリー式)
- クラッチペダルの遊びと切れに異常はないか(マニュアルミッション)
- シリンダーやホースから油漏れはないか
- ハンドル操作に異常はないか
- サイドブレーキに異常はないか
- ブレーキの効きに異常はないか
- ホーンとバックブザーに異常はないか
- 各ライトの点灯に異常はないか
- 計器類に異常はないか
- マストの上下や前後傾の操作(リーチ操作)に異常はないか
- 異音や異常振動はないか
充電器
- 充電コードに損傷はないか(バッテリー式)
- 充電スイッチの作動に異常はないか(バッテリー式)
定期自主検査(月次点検)方法
(定期自主検査)
第百五十一条の二十二 事業者は、フオークリフトについては、一月を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一月を超える期間使用しないフオークリフトの当該使用しない期間においては、この限りでない。
一 制動装置、クラツチ及び操縦装置の異常の有無
二 荷役装置及び油圧装置の異常の有無
三 ヘツドガード及びバツクレストの異常の有無
2 事業者は、前項ただし書のフオークリフトについては、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。
労働安全衛生規則第151条22に定められたとおり、定期自主検査(月次点検)の項目は以下の3つです。
- 制動装置、クラッチおよび操縦装置の異常の有無
- 荷役装置および油圧装置の異常の有無
- ヘッドガードおよびバックレストの異常の有無
定期自主検査は(月次点検)の実施には特別な資格は必要ありません。誰でも点検可能です。
しかし、開始前点検より詳細な内容になるので定期自主検査(月次検査)を委託する事業者もあります。
定期自主検査(月次点検)の実施期限は1ヶ月を超えない範囲です。
ただし、1ヶ月使用する予定がない車両は、定期自主検査(月次点検)は不要になります。
定期自主検査(月次点検)の手順
定期自主検査(月次点検)はチェックリストを作成し実施する方法がおすすめです。
また、フォークリフトの車種(エンジン・バッテリー)により検査項目が異なります。
エンジン・電動機・制御関係
- モーターの回転状態、異音、異臭(バッテリー式)
- 走行用と荷役用のコンタクター接点の損傷や緩み(バッテリー式)
- 走行用と荷役用のヒューズ端子の緩み(バッテリー式)
- 充電装置のタイマーの作動とコードの損傷(バッテリー式)
- バッテリーの液量とコードおよびコネクターの損傷(バッテリー式)
- エンジンのかかり具合、異音、排気色、排気音(エンジン式)
- エアクリーナーのエレメントの汚れ(エンジン式)
- 潤滑装置の油量、油漏れ(エンジン式)
- 冷却装置の水漏れ、ホースの損傷、ベルトのたわみ(エンジン式)
- バッテリーの液量(エンジン式)
動力伝達装置関係
- ドライブユニットの異音と油漏れ(バッテリー式)
- クラッチペダルの異音、切れ、ペダルの遊び(エンジン式)
- トランスミッション・トルクコンバーターのレバーの抜け、異音、油量(エンジン式)
走行装置関係
- タイヤの空気圧、亀裂、摩耗、ボルトの緩み
- ホイールベアリングのがたと異音
- サスペンションの亀裂、損傷、ボルトの緩み
操縦装置関係
- ハンドルの作動、遊び、がた
- ナックルのキングピンのがた
- パワーステアリングの油漏れ、ホース及びパイプの損傷
- ステアリング用チェーンの張り具合
制動装置
- 走行ブレーキのペダルの遊び、効き具合、床板との隙間
- 走行ブレーキ(デットマン式)の開放具合(リーチフォークリフト)
- 駐車ブレーキ引きしろ、効き具合
- オイルブレーキの油漏れ、油量
荷役装置
- フォークの亀裂、摩耗、止めピン部の摩耗
- マスト、リフトブラケットの亀裂、がた
- ストラドルアームの亀裂、がた(リーチフォークリフト、ウォーキーフォークリフト)
- リフトチェーンの張り具合
- アタッチメント装置の取り付け状態、作動、異音
油圧装置関係
- 作動油タンクの油漏れ、油量
- 配管ホース、配管パイプの損傷、油漏れ、取り付け状態
- 油圧ポンプ(駆動装置含む)の油漏れ、異音
- 油圧シリンダーの作動、油漏れ、ピンの摩耗、ボルトの緩み
- 方向制御弁のレバーのがた、油漏れ
安全装置関係
- ヘッドガード、バックレストのボルトの緩み、亀裂、変形
- 灯火類、方向指示器、計器類の作動、破損、水侵入
- 警報措置、後写鏡、反射鏡の音量、写影
- 給脂(グリス)状態
総合テスト
- 各装置の機能(走行、荷役)
特定自主検査(年次検査)方法
(定期自主検査)
第百五十一条の二十一 事業者は、フオークリフトについては一年を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一年を超える期間使用しないフオークリフトの当該使用しない期間においては、この限りでない。
一 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無
二 デフアレンシヤル、プロペラシヤフトその他動力伝達装置の異常の有無
三 タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無
四 かじ取り車輪の左右の回転角度、ナツクル、ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無
五 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシユーその他制動装置の異常の有無
六 フオーク、マスト、チエーン、チエーンホイールその他荷役装置の異常の有無
七 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無
八 電圧、電流その他電気系統の異常の有無
九 車体、ヘツドガード、バツクレスト、警報装置、方向指示器、燈火装置及び計器の異常の有無
2 事業者は、前項ただし書のフオークリフトについては、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。
労働安全衛生規則第151条21に定められたとおり、特定自主検査(年次点検)の項目は以下の9つです。
- 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無
- ディファレンシャル、プロペラシャフトその他動力伝達装置の異常の有無
- タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無
- かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無
- 制動能力、ブレーキ、ドラム、ブレーキシューその他制動装置の異常の有無
- フォーク、マスト、チェーン、チェーンホイールその他荷役装置の異常の有無
- 油圧ポンプ、油圧モータ、シリンダ、安全弁その他油圧装置の異常の有無
- 電圧、電流その他電気系統の異常の有無
- 車体、ヘッドガード、バックレスト、警報装置、方向指示器、灯火装置および計器の異常の有無
特定自主検査(年次点検)の期限は1年を超えない範囲です。
ただし、1年間使用する予定がない車両は、特定自主検査(年次点検)は不要になります。
(定期自主検査)
第四十五条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。
2 事業者は、前項の機械等で政令で定めるものについて同項の規定による自主検査のうち厚生労働省令で定める自主検査(以下「特定自主検査」という。)を行うときは、その使用する労働者で厚生労働省令で定める資格を有するもの又は第五十四条の三第一項に規定する登録を受け、他人の求めに応じて当該機械等について特定自主検査を行う者(以下「検査業者」という。)に実施させなければならない。
労働安全衛生法45条2に定められたとおり、特定自主検査(年次点検)は有資格者のみが実施可能です。
特定自主検査(年次点検)を実施できる資格は2つあります。
- 事業内検査者
- 検査業者検査員
事業内検査者は自社保有のフォークリフトのみ検査可能です。
検査業者検査員は、他社のフォークリフトの検査を代行して実施できます。
資格取得には講習を受講し試験の合格が必要です。
そのため特定自主検査(年次点検)は、専門のフォークリフト点検業者に依頼するケースが多いです。
点検に時間を要するため、作業が滞らないよう代車を手配する必要もあります。
特定自主検査(年次点検)実施後は、検査日(年月)が示された検査標章のステッカーをフォークリフトに貼り付ける義務もあります。
点検終了後は検査標章の年月を確認しましょう。
フォークリフト点検時の異常
(補修等)
第百五十一条の二十六 事業者は、第百五十一条の二十一若しくは第百五十一条の二十二の自主検査又は前条の点検を行つた場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。
労働安全衛生規則151条26には、法定点検で異常が見つかった場合は、補修や必要な措置を講じるよう定められています。
4種類の法定点検で異常個所を発見し、乗車前に補修を行う必要があります。
フォークリフトの点検記録の保管
(定期自主検査の記録)
第百五十一条の二十三 事業者は、前二条の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。
一 検査年月日
二 検査方法
三 検査箇所
四 検査の結果
五 検査を実施した者の氏名
六 検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容
労働安全衛生規則151条23に定められたとおり、定期自主検査(月次点検)、特定自主検査(年次点検)の記録は3年間保管する必要があります。
始業点検(作業開始前点検)の記録の保管は不要です。
定期自主検査(月次点検)と特定自主検査(年次点検)の未実施には罰則あります。
50万円以下の罰金が課せらるので、確実に実施してください。
まとめ
事業者はフォークリフトの法定点検を実施する義務があります。
フォークリフトの法定点検は、始業点検(始業開始前点検)、定期自主検査(月次点検)、特定自主検査(年次点検)の3つです。
特定自主検査(年次点検)は有資格者や検査業者が実施する必要があります。
また、始業点検(作業開始前点検)や定期自主検査(月次点検)の実施を効率よくに行うために、点検表を作成しましょう。
点検表を利用することで検査漏れを無くし、フォークリフトの異常を発見しやすくなります。
適切に点検を実施し、フォークリフト車両を安全に管理しましょう。
>>>フォークリフト法令で定められた禁止作業と安全な作業計画
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